建物は常に雨や紫外線などの外的要因にさらされています。特に屋上やベランダ・バルコニーなどは水が溜まりやすいため、劣化が進むと雨漏りのリスクが高まります。
雨漏りが発生すると躯体の劣化も進行し、建物全体の寿命を縮める原因となります。そのため、防水工事を定期的に行い、建物内部へ雨水が浸入するのを防ぐことが重要です。
雨漏りは天井や壁に染みが出てくるだけでなく、カビやシロアリの発生、建材の腐食、耐震性の低下などの大きなトラブルに繋がる恐れがあります。
さらに、湿気がこもることで室内の空気質が低下したり、漏水に伴い電気系統に不具合が起こるなどの二次被害が生じる可能性もあります。
このようなトラブルを予防するためにも、防水工事は欠かせません。
不動産売却時や賃貸運用を行う際に「雨漏りの有無」「防水のメンテナンス状況」は重要視されるポイントです。
防水対策がしっかりされている建物は、資産価値が維持されやすく、買い手や借り手にも安心感を与えます。
定期的な防水工事で建物を適切に維持管理しておくことは、将来的な資産活用においてもプラスの効果が大きいと言えるでしょう。
防水紙とは屋根や外壁部分に使用される材料で、水の浸入を防ぐ為のシート状の素材です。防水シートやルーフィングなどとも呼ばれます。
一般的には、アスファルトを浸透させた繊維シートや合成樹脂フィルムが使用されます。
防水紙の役割は次の5つです。
外部からの雨水が建物内部に浸入するのを防ぎます。万が一、屋根材や外壁材の隙間から雨水が浸入した場合でも、防水紙が最終的なバリアとなります。
屋根の場合は屋根材の下に防水紙が敷かれており、台風や地震などで屋根材が破損しても、雨水が屋根内部に浸透するのを防ぐ役割を果たします。
外壁の場合、外壁材の裏側に防水紙を貼ることで、もう一層の防水層が形成されます。外壁材や接合部や隙間からの水の浸入を防ぎます。
建物内部で発生する湿気や結露を外部に逃す調整も行います。
現代の防水紙は、防水性だけでなく透湿性も持ち合わせており、内部の湿気を外部に放出し、外部の雨水を遮断する構造になっております。
さらに防風性能も兼ね備えており、強風による風圧から建物を守り、断熱材の性能を最大限に発揮できるようにします。
防水紙を建物全体に貼ることで、耐久性が向上します。
外部からの雨水の浸入を防ぐことで、構造材や断熱材の湿気による劣化やカビを抑制し、長期間保護し建物の寿命を延ばすことに繋がります。
防水紙には防音・断熱性能を補助する効果もあります。
防音効果=密度の高い防水紙を使用することで、外部の騒音を軽減する効果があります。
断熱効果=防水紙が断熱材と一体となり、外部からの冷気や熱気の侵入を防ぎ、建物内部の温度を一定に保つサポートをする効果があります。
屋根材や外壁材の施工時にも重要な役割を果たします。
防水紙を敷設することで、建材が一時的に露出した状態でも雨水の浸入を防ぐ効果があり、施工期間中の建物の保護に役立ちます。
ベランダやバルコニーは、住まいの中でも雨や紫外線など外的ダメージを受けやすい場所です。
また、劣化が目立ちやすい場所でもあり、もし防水層が破断したり、隙間から水が入り込むと、躯体が腐食して建物全体の寿命を縮めてしまう可能性があります。
雨漏りの発生を未然に防ぎ、建物を長持ちさせるためにも、定期的な防水工事やメンテナンスが重要です。
■ひび割れ・膨れ
ベランダやバルコニーの床面や立ち上がり部分に、ひび割れや膨れが見られる場合は要注意です。
防水層が劣化し、水分が浸入している可能性があります。ひび割れの幅や深さが大きいほど、内部までダメージが進んでいると考えられるため、早急な対処が必要です。
■防水層やトップコートの剥がれ
ウレタン防水やFRP防水の仕上げに塗布しているトップコートには防水層を保護する役割があり、経年劣化によって剥がれたり、ひび割れを引き起こしてしまいます。
トップコートの機能が十分に果たされていないと防水層自体が傷む原因となるため、定期的に5年に1度を目安にトップコートの塗り替えを行うのが望ましいです。
■シーリング(コーキング)の劣化
手すりの付け根や外壁との接合部には、シーリング材が使われています。
シーリングも経年劣化によってひび割れや肉やせを起こすし、そこから雨水が浸入し、壁内部や下層に水が回ってしまう恐れがあるため注意が必要です。
防水層の表面に塗装されているトップコートの割れや剥がれのみであれば、トップコートの塗り替えでメンテナンスが可能です。また、シーリングの劣化がみられる場合は、シーリング補修を行います。
ただし、防水層にまで亀裂や膨れが発生していたり、すでに雨漏りしている場合などは防水層自体を新たに形成する必要があります。
【費用相場】
トップコートの塗り替え:1㎡あたり2,000〜4,000円
シーリング補修:1mあたり500円~1,000円
防水層の改修工事:1㎡あたり3,000円~8,000円
テラスもベランダやバルコニー同様、屋外スペースとして活用される場所です。店舗や商業施設にも設置されることも多く、防水対策が不十分だと雨漏りや躯体の腐食を招く恐れがあります。
テラスやテラス屋根は、外壁やバルコニーほど注目されにくい部分ですが、実は雨水が浸入しやすい構造になっていることが多いです。
防水層が劣化すると、室内や下階への浸水リスクが高まり、雨漏りが発生すると室内への影響はもちろんのこと、外壁や窓枠などにも大きなダメージを与えてしまいます。
■防水層のひび割れ・剥がれ
防水層にひび割れや膨れ、剥がれが発生している場合は防水性能が低下しているサインですので、早急なメンテナンスが必要となります。
放置している雨水が浸透しやすくなり、下地まで到達すると、テラス床材の腐食や雨漏りの原因となります。
■雨樋や笠木まわりからの浸水
テラス屋根や手すり部分に取り付けられている笠木が劣化して隙間ができると、そこから雨水が浸入する可能性があります。
また、雨樋が詰まって水が逆流すると、水はけが悪くなり、テラス屋根まわりから浸水するリスクが高まるので注意が必要です。
笠木とは、手すりや外壁の最上部を覆うように設置する仕上げ材のことです。
■シーリング(コーキング)の劣化
窓枠や外壁との接合部、笠木と壁の取り合い部にはシーリング材が使われています。
シーリングも紫外線や雨風の影響によって経年劣化し、ひび割れや硬化が進むと隙間が生じると、雨漏りや下地の腐食を引き起こす恐れがあります。
■テラス屋根の破損・歪み
テラス屋根の破損や歪みは、経年劣化もしくは飛来物や鳥害などの外的要因によって起こります。
屋根は紫外線や雨風の影響を受けやすいため、経年劣化によって割れや歪みを引き起こし、やがて劣化によって生じた隙間から雨水が浸入する可能性があります。
さらに、台風などの強風で石や木などがテラス屋根に当たったり、鳥が屋根をつついて破損するケースもあります。
シーリング補修や防水層に劣化がみられる場合は、それぞれ改修工事を行います。
また、もしテラス屋根の割れやテラスを支える支柱にまで破損が起きている際は、新しいものに交換する必要があります。
【費用相場】
シーリング補修:1mあたり500円~1,000円
防水層の改修工事:1㎡あたり3,000円~8,000円
屋根パネルの部分交換:1枚あたり20,000円~50,000円
屋根パネルの全体交換:50,000円~300,000円
支柱の撤去・再設置:300,000円~500,000円
笠木とは、手すりや外壁の最上部をカバーするように取り付けられている仕上げ材のことです。主にコンクリートや金属などが使われ、ベランダやバルコニーの手すり部分や、屋上の立ち上がり部分にも設置されています。
笠木は雨水が内部に浸入しないように仕上げる「雨仕舞」の要となり、笠木周りの防水処理が不足していたり、劣化が進行してしまうと、こから雨水が下地や内部へ染み込み、雨漏りや建物の老朽化を引き起こす恐れがあります。
また、笠木は建物の高い位置や手すりに取り付けられるため、目につきやすい部分でもあります。色褪せやサビ、汚れが目立つと外観を損ねる原因にもなります。
■シーリング部分の劣化
笠木と建物本体の接合部や、笠木同士の継ぎ目にはシーリング材が使われています。経年劣化によりシーリングの硬化やひび割れなどを起こると、劣化によって生じた隙間から雨水が浸入してしまいます。
また、建物の角や立ち上がりなどの取り合い部分は、構造上どうしても隙間ができやすいものです。
水の逃げ場がなかったり、排水が十分にできないと徐々に雨水が浸入し、建物内部を腐食させるリスクがあります。そのため、シーリング充填などの防水処理をしっかりと行うことが重要です。
■笠木の浮き・ズレ・破損
笠木は紫外線が当たりやすい箇所に設置されているため、経年劣化によって浮き・歪みを引き起こす場合があります。また、飛来物による衝撃や強風などで笠木がズレたり、破損するケースもあります。
このような症状を放っておくと、浮きや破損でできた隙間から雨水が内部に浸入し、雨漏りの発生に繋がってしまう恐れがあります。
■金属笠木のサビ・腐食
金属製の笠木は耐久性が高いですが、塗装の剥がれや傷などから錆が発生しやすくなります。
錆は放っておくと広範囲に広がっていき、さらに錆が原因で穴が開いてしまう可能性があります。そのため、小さな錆だとしても早めにメンテナンスすることが大切です。
軽度な錆や色褪せであれば、塗り替えによるメンテナンスで対応できます。
ただし、笠木に破損や歪みが発生していたり、全体的に劣化が進行している場合は、笠木本体の交換が必要となります。
【費用相場】
塗装:1mあたり650円~1,200円
シーリング補修:1mあたり500円~1,000円
笠木の交換:1mあたり20,000円~40,000円
FRP防水とは、FRPと呼ばれる繊維強化プラスチックを応用し、ガラス繊維シートを樹脂で固めて防水層を作る工法のことです。
軽量でありながら強度が高いので、歩行頻度の高いベランダやバルコニーに用いられることが多いです。
また、継ぎ目の少ない仕上がりになるため、雨水の浸入リスクを抑えられるメリットもあります。液状の樹脂を用いるため、複雑な形状の場所でも施工がしやすいのも特徴です。
デメリットは、FRP防水は強固な仕上がりになるため伸縮性が低く、木造などの収縮性がある建物や下地に使用するとひび割れが発生する可能性がある点です。そのため、木造住宅で施工を考えている場合は注意が必要です。
■FRP防水の耐用年数
8年~10年程度
■FRP防水の施工費用相場
1㎡あたり5,000円~8,000円
ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を数回塗布し、硬化させて防水層を形成する工法です。
複雑な形状でも施工しやすく、継ぎ目のない仕上がりになるのが特徴です。施工費用が比較的リーズナブルで、多くの住宅やマンションで採用されています。
また、ウレタン防水は既存の防水層の上から重ね塗りすることが可能なので、メンテナンスや部分補修もしやすいメリットがあります。
ただし、業者の技術力や経験によって仕上がりに差が出やすいので注意が必要です。その他にも、塗布後に乾燥時間を十分に取る必要があるため、工期が長くなりやすいデメリットもあります。
■ウレタン防水の耐用年数
10年~12年程度
■ウレタン防水の施工費用相場
1㎡あたり3,000円~7,000円
塩ビシート防水は、塩化ビニル樹脂製のシートを貼り合わせて防水層を形成していく工法のことです。
既製品の大きなシートを現場で貼っていくため、面積の大きい屋上や大型施設でも一定の厚みを保持して短時間で施工が可能です。また、耐久性が高く、紫外線や薬品への耐性も高いメリットがあります。
デメリットは、複雑な形状の場所には向いていない点です。凹凸が多い場所の場合は、シートを適正サイズにカットして貼り合わせていく必要があるため、シート同士の接合部が増えるほど雨水が浸入するリスクが高まってしまいます。
また、塩ビシート防水の施工方法によっては作業中にドリルを使用するため、騒音は発生するといった注意点もあります。
■シート防水の耐用年数
10年~15年程度
■シート防水の施工費用相場
1㎡あたり4,000円~7,000円
アスファルト防水は、アスファルトを含浸させたシートを重ねて貼り合わせて防水層を形成する工法です。マンションの屋上や大規模施設などで多く採用されています。
防水工法の中でも最も長い歴史があり、高い防水性や耐荷重性が特徴です。実績が豊富な工法なので、信頼性も高いと言えます。
ただ、施工時に熱を加えてアスファルトを溶かす方法を用いる場合は、煙や臭いが発生するというデメリットもあります。業者の技術力や経験によっても仕上がりが左右されるため、業者選びの際は注意が必要です。
■アスファルト防水の耐用年数
15年~20年程度
■アスファルト防水の費用相場
1㎡あたり5,000円~8,000円
防水工事は雨漏りを防ぐうえで、必要不可欠な工事です。工法は大きく分けて、FRP防水、ウレタン防水、塩ビシート防水、アスファルト防水の4種類あり、施工場所や下地に合わせて
選択することが大切です。
また、防水工事の際に用いられる防水紙にも水の浸入を防ぐ重要な役割があるため、どのような素材を使用するかを知っておくと安心です。
弊社で使用している防水紙は、改質アスファルトルーフィング粘着層付きタイプのもので、合成繊維不繊布を採用した最高級シリーズです。下地からこだわり、高品質な防水工事をご提供いたします。