陸屋根とは、屋上がほぼ平らに近い形状の屋根を指します。「平屋根」「フラット屋根」「フラットルーフ」とも呼ばれます。
陸屋根は完全に平らになっているわけではなく、雨水が排水できるようにわずかな勾配がついており、雨漏りを防ぐ為の防水工事が施されています。
デザイン性の高さや屋上スペースを活用できるメリットがあり、屋上緑化やバーベキュー、ベランダの拡張などに利用できます。
ただし、平面に近い形状なので、定期的に防水工事を行わないと雨漏りに繋がるリスクが高くなるといったデメリットもあるので注意が必要です。
陸屋根に水溜りができる原因は勾配不足です。そして、勾配不足が起きる理由として考えられるのが施工不良や建物の歪み、地盤沈下などです。
勾配不足による水溜りを放っておくと、溜まった水によって防水層の劣化が進み、やがて防水層の剥がれや膨れなどに発展して雨漏りが発生する恐れがあります。
水溜りができているのをよく見かける場合は、早めに専門業者に調査してもらい、雨水を正しく排水できるように勾配を付ける工事を行うことが大切です。
陸屋根は日頃から紫外線や雨風にさらされているため、経年劣化や飛来物などによる衝撃によって、ひび割れや剥がれ、膨れ、防水機能の低下などを引き起こします。
これらの劣化症状を放置していると雨漏りのリスクが高まっていくため、必ず定期的にメンテナンスを実施し、もし劣化を見つけた際は早めに対処することが必要です。
陸屋根に降った雨は落ち葉やゴミ、泥、砂などと一緒に排水口に流れて行くため、落ち葉などが排水口が詰まってしまう場合があります。
落ち葉やゴミが詰まっているだけであれば綺麗に掃除をすれば改善できますが、排水口の破損や歪みがみられる場合は、部品の交換や勾配調整などの修理が必要となります。
排水口が詰まると雨水が正しく排水できなくなり、水溜りの発生や防水層の劣化などに繋がる可能性があるため、排水口に異常を感じた際は一度専門業者に見てもらうと安心です。
陸屋根で行われる主な防水工法は、以下の4つです。
耐用年数:約8年~10年 単価:約5,000円~8,000円/㎡
FRP防水とは、硬化剤を含む液状の樹脂とガラス繊維(ファイバーグラス)を含む防水材を組み合わせて防水層を形成する工法です。
軽量で建物への負担が少ないといった特徴を持ちながらも、強度・耐摩耗性も兼ね備えているため、歩行頻度の多い場所でも長期的に防水機能を発揮することが可能です。
その他にも、硬化するスピードが速いので工期が短縮できたり、ガラス繊維を用いる工法のため、硬く艶のある美観を維持しやすいというのもメリットの一つです。
ただ、防水層が硬いため、木造の建物や経年変化で動きが大きい下地に施工をすると、ひび割れが起きてしまう点がデメリットとして挙げられます。
職人の技術力た環境によっても施工の品質が変わってくるため、実績のある業者選びが重要となります。
耐用年数:約10年~12年 単価:約3,000円~7,000円/㎡
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を下地に塗り重ねて、防水層を形成する工法です。
液体を現場で塗布するため、複雑な形状の場所でも施工しやすいのが特徴です。継ぎ目のない防水層になるため、雨水が浸入するするリスクも抑えられます。
また、劣化箇所に部分的にウレタン樹脂を重ね塗りして補修ができるため、メンテナンスがしやすいというメリットもあります。
デメリットは、職人の技術力や環境によって防水層の厚みが均一にならずにムラができたり、紫外線や風雨の影響を受けやすいため、定期的なメンテナンスが必要になる点です。
耐用年数:約10年~15年 単価:約4,000円~7,000円/㎡
シート防水とは、工場で生産されたシート状の防水材を貼り付けて防水層を形成する工法です。シートの種類は、主に塩化ビニールとゴムシートの2つあり、現在よく使われているのは塩ビシートです。
シート防水は工場で作られた既製品シートを使用するため、防水層を一定の厚みで形成できるメリットがあります。
そしてウレタン防水などと異なり、液体の樹脂を乾燥・硬化させる時間が不要で、大きなシートで一度に広範囲を施工できるため、面積の広い場所でも短時間で作業を終わらせることが可能です。
デメリットは、シート同士の接合部の防水処理に不備があると、隙間から雨水が浸入して雨漏りに発展するリスクが高まる点です。
また、施工場所に配管や立ち上がりが多いとシートの加工や接着に手間がかかるため、複雑な形状では施工が難しいという注意点もあります。
耐用年数:約15年〜20年 単価:約6,000~9,000円/㎡
アスファルト防水とは、アスファルトを含むシート状の防水材を貼り重ねて防水層を形成する工法です。
アスファルト防水の施工方法は3つあり、加熱釜でアスファルトを溶かしながら施工する「熱工法」、バーナーでアスファルトを炙りながら施工する「トーチ工法」、火を使わずに施工を行う「常温工法(冷工法)」に分類されます。
メリットは、耐水性や耐久性が高く、摩耗や衝撃にも強い点です。防水工法の中で最も長い歴史を持つため、実績が豊富な工法で、施工経験豊富な職人や業者も多いです。
ただし、火を使う施工方法の場合は施工に手間と時間がかかり、職人の技術力や経験が仕上がりを左右します。また、厚みのある防水層になるため、建物への負荷が大きくなる可能性もデメリットとして考えられます。
陸屋根の修理方法は状況によっても異なりますが、例として次のような工事を行います。
修理にかかる費用は、部分補修であれば数万円で済むこともありますが、全面的な改修工事が必要になる場合は、一般的な戸建て住宅で100万円前後かかるケースもあります。
トップコートとは、防水層の表面に塗装されている塗料のことです。防水層は紫外線の影響を受けやすいため、トップコートで保護することにより、防水層の機能を長く保つことが可能になります。
トップコートを塗り替えは、5年に1度を目安に行うのが理想的です。費用は防水層の種類によって変動しますが、1㎡あたり1,500円~3,000円が相場となります。
軽度なひび割れや剥がれであれば、部分補修で対応できる場合があります。
ウレタン防水の場合は亀裂が発生している箇所にウレタン樹脂を重ね塗りしたり、シート防水では劣化部分にカットしたシートを貼り付けて補修するなどの方法が用いられます。
全体的に劣化が広がっていたり、雨漏りが発生している場合は、部分補修ではなく全面的な改修工事を行います。
改修工事の際は、既存の防水層の上から新しい防水層を形成する方法と、既存の防水層を撤去して新たに防水層を形成する方法があります。
どちらを選択するかは下地や劣化状況によって異なるため、施工業者とメリット・デメリットをしっかりと話し合って決めることが大切です。
勾配不足が発生している場合は、モルタルや補修材などを使用して新たに勾配をつける工事を行います。
費用は施工範囲や補修方法によって変動しますが、一般的な戸建て住宅で15万円~40万円程度が相場です。
排水に何らかの問題がみられる場合は、落ち葉などの掃除や排水口の交換、新設を行います。
掃除程度であれば1万円~3万円程で、部分的な交換や新設を必要とする場合は3万円~15万円程が相場となります。
陸屋根は紫外線や雨風の影響を受けやすく、劣化が進行すると雨漏りに繋がる恐れがあります。そのため、定期的な点検やメンテナンスを実施することが重要です。
5年~10年に1度を目安に専門業者に点検を依頼することで、早期に小さなひび割れやシーリング材の劣化などを発見でき、大規模な改修工事が必要となる前に部分的な修理で対処が可能となります。
また、日頃からご自身で正しく排水れているか?防水層に亀裂や剥がれが発生していないか?などをチェックし、落ち葉や泥なども定期的に掃除しておくと、より防水層による性能を長く保つことができます。
雨漏りは建物全体に大きなダメージを与えるトラブルですので、陸屋根のメンテナンス時期について知りたい方や防水工事に関する気になる点などがありましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。